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美容室の売上目標はどう決める?オーナーが押さえるべき3つの数字

毎月の売上は確認している。予約も入っていて、スタッフも忙しく働いている。それなのに、月末になると思ったほどお金が残っていない。そんなことはありませんか。

「スタイリスト1人あたり月100万円」「去年より売上を10%増やす」といった目標を立てているお店もあるでしょう。ただ、その目標を達成しても、家賃やスタッフの給与、税金、借入の返済を支払うと、手元にほとんど残らないことがあります。

同じ売上でも、メニューの構成やスタッフへの支払い方、借入の有無によって、お店に残るお金は変わります。売上目標は、ほかのお店の数字や前年の実績だけでなく、自店で必要なお金から考えることが大切です。

では、自分のお店はいくら売り上げればよいのでしょうか。

まずは、原価率・固定費・損益分岐点の3つの数字から、お店の経費をまかなう売上を確認してみましょう。そのうえで、税金や返済、オーナーの生活費、将来の設備更新まで含めて、目指したい売上を考えていきます。

売上目標を考えるために、押さえたい3つの数字

最初に見るのは、原価率・固定費・損益分岐点です。どれも、自店の売上と費用の関係をつかむための数字です。

原価率:売上に対して材料や商品の費用がどれくらいかかるか

原価率は、売上に対して材料や商品の費用がどれくらいかかるかを表す割合です。

カット中心のお店と、カラーやパーマの割合が高いお店では、使う薬剤の種類や量が異なります。また、シャンプーなどの店販には、商品の仕入原価がかかります。

まずは、技術売上と店販売上を分けて確認します。

売上の区分対応する主な原価
カット・カラーなどの技術売上施術に使った薬剤などの材料費
シャンプーなどの店販売上販売した商品の仕入原価

例えば、技術売上100万円に対して材料費が10万円なら、材料費の割合は10%です。

材料費の割合=施術に使った材料費÷技術売上×100

材料費の割合が高くても、料金を適切に設定できていれば、利益につながる場合があります。確認したいのは、割合だけでなく「材料費を引いた後にいくら残るか」です。

店販も同様です。店販が増えてお店全体の原価率が上がったとしても、利益の金額が増えていれば、原価率の上昇だけを問題にする必要はありません。

なお、仕入れた商品がすべてその月に売れるとは限りません。仕入れの支払額と、販売した商品の原価は分けて考えましょう。

固定費:予約が少ない月にも、いくらかかるか

固定費は、売上が増減しても一定程度かかる費用です。まずは、毎月の支出を一覧にしてみましょう。

費用の例確認する内容
家賃店舗の賃料や共益費
スタッフの固定給基本給、会社負担の社会保険料など
定額の広告掲載料毎月決まって支払う掲載料
通信費・システム利用料電話、予約管理システムなどの月額料金
リース料設備などの毎月の契約額

予約が少ない月でも、これらの支払いは続きます。「今月はいくら使ったか」だけでなく、「売上に関係なく、毎月いくら必要か」を把握することが大切です。

水道光熱費など、固定部分と使用量に応じた部分が混ざる費用もあります。ただ、最初からすべてを細かく分けようとすると、集計が難しくなります。

まずは、人件費や材料費など、金額が大きく、売上との関係が目標に影響しやすい費用から整理しましょう。

基本給と歩合、定額広告と成果報酬は分けて考える

「人件費だから固定費」「広告費だから固定費」と、費用の名前だけで判断しないことも大切です。

支払いの内容売上目標を考える際の整理
毎月一定の基本給固定費
売上に応じて上乗せする歩合給変動費
毎月定額の広告掲載料固定費
売上に連動する広告・紹介の手数料変動費

材料費に加え、売上に連動する歩合や決済手数料なども含めた割合が「変動費率」です。必要な売上の計算には、この変動費率を使います。

材料費だけを差し引いて計算すると、売上が増えたときに発生する歩合などを見落とす可能性があります。

最低保証のある報酬も、契約内容の確認が必要です。「基本給に歩合を上乗せする契約」と「最低保証額と歩合計算額の高い方を支払う契約」では、支払額の増え方が異なります。保証額と歩合を単純に足さず、実際の計算方法に合わせて整理しましょう。

損益分岐点:経費をまかなうには、いくら売り上げる必要があるか

損益分岐点は、売上と費用がちょうど同じになり、利益がゼロになる売上の水準です。

材料費などの変動費を支払い、その後に残った金額で家賃や固定給などの固定費をまかなう。この両方を払える売上が、最初に確認したい基準になります。

「1人100万円」という目標も、この基準と比べることで、自店にとって十分なのか、足りないのかを考えられるようになります。

まずは、お店の経費をまかなう売上を計算しよう

自店の固定費と変動費率が分かったら、必要な売上を計算してみましょう。ここでは、お店の経費をまかなうための金額を求めます。

固定費と変動費率から、損益分岐点を計算する

損益分岐点は、次の式で求められます。

損益分岐点となる売上=固定費÷(1-変動費率)

売上から変動費を差し引き、残った金額で固定費をまかなえる水準を計算する考え方です。中小機構 J-Net21「損益分岐点の計算方法と経営改善に向けた活用方法」

固定費300万円・変動費率10%なら、月商約334万円

毎月の固定費が300万円、変動費率が10%のお店を考えます。

300万円÷(1-0.10)=約333.3万円

端数を切り上げると、経費をまかなう売上の目安は月334万円です。

これは考え方を示すための仮定であり、業界平均や特定のお客様の実績ではありません。変動費率10%には材料費などを含めています。歩合報酬などが別にかかる場合は、その分も含めて計算し直します。

損益分岐点は、売上目標の出発点

月334万円は、利益がほぼゼロになる水準です。税金や借入返済、オーナーの生活費まで十分に支払えることを示す数字ではありません。

損益分岐点は、まず把握しておきたい基準です。ただし、ここを最終目標にすると、経費をまかなえていても手元のお金が足りなくなる場合があります。

次に、利益の計算とは別に、実際のお金の出入りを確認します。

税金・返済・生活費まで含めて、必要な売上を考える

「月334万円なら達成できそう」と感じた方もいるかもしれません。ただ、その売上で経費をまかなえても、借入の返済や納税を済ませた後に、お金が足りなくなることがあります。

次は、毎月の支払いとオーナー自身の暮らしまで含めて、必要な売上を見直していきます。

借入返済と納税に必要なお金を確認する

内装や設備のために借入をしている場合、毎月の返済があります。借入金の元金返済は経費にはなりませんが、手元のお金は減ります。

一方、設備などの減価償却費は経費になっても、その月に同額の支払いが生じるとは限りません。利益と手元のお金には、このような違いがあります。中小機構 J-Net21「資金繰りとは」

納税に必要なお金も確認しましょう。消費税の納税義務がある場合は消費税を、法人なら法人税など、個人事業主なら所得税・住民税などを見込む必要があります。

例えば、年間の納税見込額を12で割ると、毎月確保しておきたい金額の目安をつかめます。ただし、実際の納付月にはまとまった支払いがあるため、支払時期まで確認しておきましょう。

消費税は、売上や費用を税込み・税抜きのどちらで集計しているかによって、計算上の調整も変わります。すでに織り込んだ税金や利息を、重ねて加えないように整理します。

個人事業主は、生活費も計算する

個人事業主の場合、お店の経費をまかなえても、自分の生活費が十分に残るとは限りません。

事業のお金から支払う生活費は、従業員の給与と同じ経費にはなりません。そのため、生活に必要な金額を、売上目標を考える際に別途見込む必要があります。国税庁「青色申告決算書の書き方」

法人の場合は、オーナーへの役員報酬を費用に含めて考えるため、同じ生活費をさらに上乗せしないよう注意します。

個人と法人では、お金の受け取り方や費用の扱いが異なります。自店の形に合わせて整理しましょう。

経費以外の支出を含めて、必要な売上を見直す

ここまで確認した金額をもとに、支払いに必要な利益を見積もります。

利益を残すための売上は、次の式で考えられます。

必要な売上=(固定費+目標利益)÷(1-変動費率)

例えば、先ほどのお店で、各種の支払いを考慮した結果、毎月60万円の利益が必要だと見積もった場合は、次の計算になります。

(300万円+60万円)÷(1-0.10)=400万円

経費だけをまかなう目安は月334万円でも、利益を60万円確保する目標は月400万円になります。中小機構 J-Net21「損益分岐点を使った目標売上高」

この60万円は仮定です。税金・返済・生活費の合計を、そのまま目標利益にすればよいとは限りません。減価償却費や入出金の時期、売上が増えた場合の税額なども確認し、自店に必要な利益を見積もります。

将来のために残したいお金も、売上目標に含めよう

税金や返済を支払えて、生活費も確保できる。そこまで分かると、目標の金額にも納得しやすくなります。

ただ、今のお店を続けていくにも、設備の交換や内装の修繕が必要になることがあります。「支払い後に残ったら貯めよう」では、必要な時期までに十分な資金を準備できないかもしれません。

将来のために残したいお金も、あらかじめ売上目標に含めて考えましょう。

店舗の修繕・設備更新には、まとまったお金が必要

美容室では、給湯器や空調の交換、内装の修繕などが必要になることがあります。新たな出店や採用を考える場合も、準備のための資金が必要です。

まずは、次のような予定を書き出してみましょう。

  • どの設備を、いつ頃更新しそうか
  • 店舗の改修を考えているか
  • 採用や出店など、今後取り組みたいことがあるか
  • 想定外の支払いに備えて、いくら手元に残したいか

将来の使い道が見えると、売上目標にも根拠を持たせやすくなります。

毎月いくら蓄えたいかを、売上目標に織り込む

例えば、3年後の設備更新に向けて180万円を準備したい場合、単純に36か月で分けると、毎月5万円を確保する計画になります。

これは支出や蓄えの計画であり、積み立てた金額がそのまま経費になるという意味ではありません。

また、「毎月20万円残したい」からといって、売上目標を20万円増やすだけでは届かない場合があります。増えた売上に伴って材料費や歩合が発生し、利益が増えると税額も変わるためです。

将来に残したい金額から必要な利益を見積もり、その利益を確保できる売上を計算します。ここまで考えることで、目標は「今月の支払いをまかなう金額」から「お店の将来をつくる金額」へ変わります。

お店の売上目標から、スタッフ1人あたり・1日あたりの目安を出す

必要な売上を計算して、「今より増やさなければ」と感じることもあるでしょう。ただ、大きな月商の数字だけでは、何をすれば届くのかが見えにくいものです。

スタッフの人数や出勤日数、客単価に分けて、日々の仕事で取り組める目標に変えてみましょう。

スタッフの役割や出勤日数に合わせて目標を分ける

仮に、お店の売上目標が月400万円で、技術売上を担うスタイリストが3人、同程度の日数・時間で働いているとします。店販を含めず単純に分けると、1人あたり月約133.3万円です。

ただし、スタッフの総人数で機械的に割らないようにしましょう。

アシスタントは施術を支える役割を担うため、スタイリストと同じ売上目標を割り当てる方法が実態に合うとは限りません。出勤日数や担当業務が異なる場合も調整が必要です。

店販があるお店では、その売上をいくら見込むかを整理し、残りを技術売上の目標として考えます。

月30万円の売上アップに必要な客数を、客単価から計算する

現在の売上と目標を比べて、「あと月30万円増やしたい」と分かったとします。

スタイリスト3人が、それぞれ月25日働く場合、1人が1日に増やしたい売上は次のようになります。

30万円÷3人÷25日=4,000円

客単価が8,000円なら、1人あたり2日でお客様をもう1人担当すると、計算上は届く金額です。

「お店全体で月30万円」よりも、「自分は2日でお客様をもう1人」と考えた方が、取り組みを具体化しやすくなります。

もちろん、予約を受けられる時間があるかも確認します。また、30万円は追加売上であり、その全額が利益として残るわけではありません。

客数だけでなく、単価や追加メニューからも考える

予約枠に余裕が少ない場合は、客数を増やす以外の方法も考えます。

例えば、カットで来店したお客様に、悩みや希望に合うヘッドスパなどを紹介する方法があります。必要に合った提案ができれば、満足度と客単価の両方につながる可能性があります。

その際は、追加の材料費や施術時間も確認しましょう。単価が上がっても、施術時間が長くなり、ほかの予約を受けられなくなる場合があります。

客数、客単価、メニュー構成、予約枠の使い方。目標との差を把握したうえで、自店で取り組みやすい方法を考えていきます。

まとめ:自分のお店に合う売上目標を、税理士と整理しよう

売上目標を考える出発点は、原価率・固定費・損益分岐点の3つの数字です。自店の費用を整理すると、経費をまかなうために必要な売上が見えてきます。

そこに税金・返済・生活費、さらに将来のために残したいお金を織り込むことで、お店を続けていくための目標になります。

大切なのは、目標の数字を大きくすることだけではありません。「なぜその売上が必要なのか」が分かり、スタッフ1人あたり・1日あたりの行動まで考えられることです。

「歩合や最低保証があり、費用を分けにくい」「返済や生活費まで含めると、いくら必要か分からない」「設備更新に向けてお金を残したい」。そんな場合は、税理士と一緒に整理してみましょう。

毎月の売上と費用、給与・報酬の計算方法、借入の返済予定、今後の設備投資の予定が分かる資料があると、相談を進めやすくなります。

plusC会計事務所では、美容師として働いた経験を持つ税理士が、美容室の経営やお金の相談に対応しています。自分のお店に合う売上目標を考えたい方は、美容室・サロン向けのサポートをご覧いただき、初回無料面談をご利用ください。

記事の監修

plusC会計事務所

代表税理士 平川 太郎

経営とは、ヒト・モノ・カネ・情報を掛け合わせながら価値を生み直し続ける“終わりなきプロジェクト”という考えのもと、企業の持続的な成長を支援。
5つの“+C”(Consulting・Creative・Competition・Cash・Combination)を理念に、経営判断に必要なデータ分析や資金繰り支援、デジタルツールを活用した効率化サポートを行う。

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